- WEB拍手お礼ページ用・SS募集 -
WEB拍手お礼ページ用のSSを募集、公開させていただいていました。
2009年9月から2010年2月まで募集、2009年10月から2010年3月までの公開でした。

投稿してくださった作家の皆さま、ありがとうございました!!


制作者さま以外の作品の転載・転用は禁止です。
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ご協力お願いいたします。
↓↓ 10月・投稿作品 ↓↓
現代パロではありませんが、ハロウィンネタです。
文・羅菜さま

「とりっく おあ とりーとぉ!!」
「・・・へ?」

委員会室のドアを開けた作兵衛を迎えたのは平仮名で発音された英語と、可愛らしく仮装した後輩だった。



「富松せんぱいはハロウィン知りませんかぁ〜?」
ジャック・オ・ランタンに仮装したしんべえが最初に近寄ってくる。
「お菓子が貰えるんですよ!」
「いたずらもできるんですよ・・・っ!」
続いて魔法使いに仮装した喜三太、キョンシーに仮装した平太が近づく。

「いや・・・知ってるけど・・・」

それはそうだ。 今日の忍術学園はハロウィンムード一色なのだ。
これも、学園長先生のありがたーい思いつきのおかげだ。
現に作兵衛も狼人間の仮装をしている。

「で、」 「でで、」 「富松せんぱい」
      
          「「「とりっくおあとりぃとぉー!!」」」

満開の笑みで手を作兵衛の方へと出す。
作兵衛は「しかたねぇな」 っと言って棒がついたキャンディーを3人へ渡す。

「きゃーっ!」 「やったぁ!」 「キャンディーだぁ!!」
            「「「富松せんぱいありがとうございまぁす!」」」
「おう。ちゃんと食べた後は歯みがけよ?」

なんだかんだ言って面倒見の良い作兵衛である。
その時、奥から留三郎が出てきた。

「よっ作! 3人とも、作にお菓子貰ったのか? 良かったなぁ〜」

親馬鹿全開な笑顔で3人をなでる。 留三郎も吸血鬼の仮装をしていた。
因みに今回の学園長が思いついたのは1週間前で、全校生徒は1週間の間に仮装道具を調達し、仮装しなければならなかった。

言うまでもないがこの4人の衣装は留三郎の手作りである。

「じゃ、僕たち他のせんぱい方にお菓子貰ってきまーす!」
「「いってきまーす!」」
「おー!気をつけていくんだぞー!」


基本的に下級生は上級生にお菓子を貰いに行く。だから上級生はお菓子をあらかじめたんまりと用意しておくのだ。
(わざと下級生の可愛らしいいたずらにかかりたくて用意しない上級生も1人ほどいるが)
3、4年は上級生(?)ながらあげもするが貰いもするので一番良い学年とされている。

「さて・・・作」
「なんすか?」
「俺には言ってくれないのか?」

手を後ろに隠し、(性格には手にもっているのもを隠しているのだが)笑顔で問われて言わないわけにはいかない。

「・・・Trick or treat?」
「もちろんお菓子だ! 作のは特別製だぞ!!」

満面の笑みで渡されたのは多種類のクッキーが入っている袋だった。

「ありがとうございます。 流石、美味そうっすね」

笑顔で作兵衛は礼を言う。 そんな作兵衛の前に手が出される。

「Trick or treat?」
「へ?・・・・ああ」

年下にたかるのか・・・ち思いながらも自分の袋を探る。
しかし

「あ・・・ ない」

そう、自分で用意した菓子はさっき3人にあげたのが最後で、後は自分がもらった菓子しか入っていなかった。
他の人から貰った菓子を何食わぬ顔で渡せばよかったものを、作兵衛はもう「ない」と声に出してしまった。

途端に留三郎の顔が何かを企んだ笑顔に変わる。

「作、ないと言うことは・・・ 悪戯だな!!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 自室から持ってきます!!」

襖に急いで駆け寄ったが、留三郎が作兵衛に後ろから抱きつくほうが早かった。

「作ぅ? それはルール違反なんじゃないか?」
「年下にたかる人にルールなんていりませんっ!」

必死に留三郎の腕から逃れようとするが、6年生の力にかなうはずがない。
そんな小さな狼男の耳元で吸血鬼が囁く。


「大丈夫だ・・・ 血‘は’吸わないから」




Trick or treat?

お菓子 くれなきゃ 悪戯するぞ!!


...END

文・悠里さま(HP



「うさぎ、うさぎ。何見てはねる」

長屋の廊下で一人呟くように歌う。


――今日も一日が終わってしまう。


あと1年の期限も、もう半年だ。
綺麗な十五夜の満月の光も目に痛い。
今は会いたいと思えば容易に会うことができるのに。
これからはうさぎのように必死にはねても会うことができないのだ。

「食満先輩・・・・」

なんで傍にいないのだろう。
こんなことを考えてしまうなら会いに行って傍にいればいいのに。
そう思っても素直に何かなれやしない。

「・・・・・作」

大好きな声が背後で聞こえて振り返る。
気配なんて感じれなかった。
でもそれが6年と3年の差なのだろう。


――なんで、一緒の年に生まれなかったんだ


唇をかみしめる。

「何見てたんだ?」

「月を、見てました」

優しい笑顔で尋ねられて顔を背けた。
情けない顔をしているってわかってた。
いま顔を見てしまったらきっと行かないでと引き止めてしまう。

「ああ、今日は十五夜だったな」

しんべヱたちも月見をやるとかいってたか。
顔を背けたことを気にせず横に座った先輩の声に胸が苦しくなった。

「どうしたんですか?なんか用ですか?」

声が震えてしまったけれど自然に言うことができた。
思っていることは言わない。
考えていること全部が自分のわがままでしかない。

「用はないぞ。でも、用がなくても会いに来ていいだろ?」

しいて言うなら、作に会いたくなってな。
その言葉に思わず振り返って顔を直視する。
先輩の顔は、とても優しげで。

「そんなこと言っても何もあげませんよ」

なんて意地悪く言ってしまう。


――本当は嬉しいくせに


「そんなこと言うなよ」

そう言って頭を撫でてくれるその手は大きくて安らぐ。
いつもなら子供扱いしないでくれと怒るところだが苦しかった心には嬉しくて。
来年もその次の年もこうであればいいと思ってしまう。

「来年もこうして一緒に月見をしたいな」

まるで考えを読むように自分と同じことを先輩が言うものだからそれまでしかめっ面をしていた顔がゆがむ。

「来年も・・・一緒に見てくれるんですか?」

「忍びは明るい夜は仕事ができないからな」

目に涙がたまって、でもそれを落とさないように少し上を向く。

「じゃあ、次は屋根の上で待ってます」

うさぎのように満月にはねなくても満月から近づいてきてくれる。
だから、せめて月に近いところで彼を待つ。


「ああ、だから俺のことを忘れようなんて思わないでくれ」


先輩の言葉を聞いて自分一人が不安だった訳ではないのだと思い知る。


「先輩こそ、約束・・・忘れないでくださいよ」


忘れられないように覚えていてもらえるように精一杯の笑顔を見せた。




うさぎ、うさぎ。何見てはねる。
十五夜お月さまみてはねる。

それはなぜかって?




だって、あなたが好きだから。


...END
 


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