- WEB拍手お礼ページ用・SS募集 -
WEB拍手お礼ページ用のSSを募集、公開させていただいていました。
2009年9月から2010年2月まで募集、2009年10月から2010年3月までの公開でした。

投稿してくださった作家の皆さま、ありがとうございました!!


制作者さま以外の作品の転載・転用は禁止です。
HPにお邪魔するさいは、マナーを守ってご迷惑をおかけしないようにしてください。
ご協力お願いいたします。
↓↓ 12月・投稿作品 ↓↓
文・高橋あすかさま(HP

もう紅葉も見納めか。
学園から見える山々は赤い化粧がよく似合っている。
次の休みには用具委員会で紅葉狩りに行こうか。
最後のチャンスかもしれないがしんべヱは花より団子かもしれないな。と笑みを深めた。
そういえば久しく昼間の景色を見ていなかったと気付いた。
窓から入る風が頬に冷たく少しばかり痛い。
廊下を歩きながら冬の始まりを予感させる。
どうりで寒いわけだ。
夜の世界に身を投じると季節感を感じにくくなる。
雪が近いかもしれないな…そうなったら同級のやつらと雪見酒でもするか。
そう考えた。
今回は怪我もなく無事帰還した。
一週間という短い期間でも学園に戻ってきたとき妙に懐かしかった。

帰って来た早々ご苦労なことだな。

忍務明けの委員会。同級生たちは呆れたように可笑しそうに笑っていた。
用具委員会担当教師の吉野から用具倉庫の鍵を受け取った。
話の流れで一年生三人は遅れてる授業の補習だと教えてもらった。
元々今日は委員会として活動するつもりはなかった。
個人的な理由だ。
生物委員会から冬眠する動物たちの寝床を、と頼まれた虫籠の修理と
四年生の綾部が頼んで来た踏鍬の踏子ちゃんを冬使用に補強。
そういえば医務室の薬棚がロウを塗っても開けづらいと伊作が嘆いていた。
忍務前にやり残した用具委員会の仕事がたくさんあった。
多分それ以外にも仕事は舞い込んできてるはずだ。
そこまで考えて苦笑する。疲れてるはずなのに委員会のこととなると、伊作のことは言えない。
物を直すのは好きだ。
直したときの達成感と没頭できる充実感が同時に味わえる。
「ん?」
用具倉庫の戸が開いている。
別に不思議なことじゃない。
鍵は二つあった。
吉野から受け取った鍵は置き鍵で、そしてもう一つ。
自分のよりも幾分小さな、泥まみれの草履一足がちょんと足並みを揃えていた。
「…作兵衛か?」
覗き込んだ用具倉庫は薄暗かった。
中からは人の気配があるのに返事は返ってこない。
若草色の、かつて自分も身に纏った忍び装束が背を向けたまま。
振り返りもしない愛しい後輩に文字通り忍び寄る。
スースーと可愛い寝息を立てて寝ていた。
「…たく、風邪引くぞ作兵衛」
あどけない寝顔のまま手には修繕中の虫籠を抱えていた。
つぎはぎだらけの不格好で所々に補正した跡がわかる虫籠が床に散らばる。
一つ手に取った。
すぐに誰が手掛けたかわかる。
(なるほどな…だから作兵衛が…)
一年生たちが直したんだろう。
不慣れな手つきで一所懸命、できないなりに頑張って修理した虫籠にその姿が浮かぶ。
一応開いていた穴は塞がっていたが止め金が弱い。
残念だがこれではすぐに脱走されてしまう。
作兵衛の脇に綺麗に並んだ虫籠はつたない修繕を補強されていた。
しかも、と留三郎は頬を緩めた。
うまい具合に、ぱっと見ではわからないような配慮されている。
作兵衛なりの気遣いなんだ。
「…ありがとな」
もう一つの鍵は作兵衛に渡した。
単なる逢うための口実だったのに。
頭巾の上からやんわりと撫でる。
抱きしめたいのをグッと、ググッと堪えたのを自分で褒めたい。
「ん…」
「お?」
小さな身体が身震いをした。
師走にこんな薄着のままなのだ。
風邪を引くかもしれない。
起きるかな、と手を離した。
しかしその手を追うようにぐっと掴まれた。
「え、っうわっ!」
ガンとしたたかに背中を打ち付けられた。
不意打ちをつかれてはさすがの六年生でも対処できなかった。
ましてや気を許した相手なら尚更だ。
痛い。痛いのだがそれよりも、胸の上に降ってきた温もりに思考が固まる。
くぅくぅと鳴いて腕に抱き着いて煖を取り眠り続けている。
「……っ〜!!!…」
思わず声が出そうで、左手でなんとか押さえ込んた。
寝ぼけていたとしても作兵衛から抱き着いて来たなど初めてだ。
−作兵衛が行動する前に留三郎が抱き着き、過剰なスキンシップを取るので自業自得だとは本人は気付いてない−
胸の上、耳を押し当てるようにして、少し身をよじった。
猫がそうするように気に入った場所を見つけると満足そうに笑ってまたすやすやと眠りにつく。
可愛い。可愛すぎる。
身もだえしそうな身体を必死に抑えて、そろそろとその身を腕の中へ閉じ込めた。
途端、鼻孔にダイレクトに香る作兵衛のニオイにくらくらと目眩を感じた。

帰って来たんだ。

本当は用具倉庫に来れば会える気がしていたのかもしれない。
無意識に作兵衛に逢いたがっていた。
本来なら起こさなくちゃならないのに、留三郎は起こさないよう細心の注意を払いまん幕を引き寄せた。
この際、ないよりマシ。
今はこの温かい恋人を抱きしめることにしよう。
冬は、人肌が恋しいから。

そう言い訳して。

End

オケマ↓
(起きたら留三郎の腕の中でびっくり)
「ととととととととととっ!!!」
「…作?起きたのか?」
「留三郎先輩!?な、なんで!?ハッ!お、俺また妄想に!?」
「大丈夫だ。お前に押し倒されてそのまま寝ただけだ…」
(跳び起きようとする作兵衛を強く抱き込んだ)
「おおおお押し倒し…っ〜〜〜っ」
(まどろむ留三郎は作兵衛の頬を撫でる。大パニックの作兵衛)
「あぁ…やっぱり温かいな…作…もう少し寝ないか」
「お、俺、先輩に…っ〜!!」
「…作…」
「は、はぃい!?」
「ただいま…」
(へろんと蕩ける笑みを零して眠りについた)
「……はい。留三郎先輩。お帰りなさい」


冬でもほっこりと暖かくなるには貴方がいるから。

End

文・羅菜さま

「「おぉ〜〜〜〜!!!」」

二人はまだ誰にも踏まれていない白に驚きと感動の声を上げた。








「組み手のテスト?」
二日前の委員会の終わりに二人は一緒に長屋へと向かっていた途中、 作兵衛が「お願いがあるんですけど・・・」と言ってきた。

勿論、愛しの恋人の頼みを断る留三郎ではない。

なので頼みを聞くと、作兵衛は3日後に組み手のテストがあると言った。


「はい それで、あの・・・ 稽古をつけてくれませんか?」
「もちろんいいぞ!3日だろ?なら早いほうがいいだろう。明日は丁度休みだな・・・明日は空いてるか?」
「はい!大丈夫っす!」
「よし、じゃあ明日の巳の刻に用具倉庫前で待ち合わせだ!」
「ありがとうございます!」


話が纏まると丁度長屋の別れ道に差し掛かった。

「あ、じゃあお疲れ様っした! お休みなさい」
「ああ、お休み作」


作兵衛はペコリと軽くお辞儀をすると3年の長屋へ小走りで向かっていく。
そんな姿を留三郎は笑顔で見ていたが、視界に白いものが映ったので外を見ると



「お・・・雪か     明日は寒くなるな」


留三郎は明日の稽古の支障にはならないでくれ、と祈りながら自分の長屋へと歩いていった。








そして冒頭へと戻る




「一日で積もるもんなんですねぇ」
真っ白な雪に足跡を付けながら作兵衛は関心したように言う。

「さすがにそこまで深くは積っていないみたいだがな」
軽く掘りながら留三郎も言うが、何か思いついたのか何かを企んだ笑みを零した。 しかし作兵衛は気付かない。



「まぁいっか じゃあ、先輩けいk「作、雪だるまを作ろう!!」 「はい!!?」


振り返れば転がすための小さな雪球を作っている留三郎がいた。


「いや、今日は稽古をつけてくれるんでしょ!?」
「稽古はちゃんとするぞ!雪だるまは準備体操と雪退かしのためだ!」
「なんですかそれ!?」



留三郎は思ってもいない時に思ってもいないことを言う。
勿論作兵衛は反抗するのだが、結局丸め込まれてしまうことが多い(ほぼ100%)



そして今回も例により雪だるま作りをすることになったのである。



(どうしてこうなった・・・・っ!)

作兵衛は雪だまを作りながらいかに留三郎からの思いつきを阻止するかを考える。 しかしどんなに考えても毎回結局は丸め込まれてしまうのであった。
そんな考えをしている作兵衛をよそに留三郎はニコニコと雪だまを転がしている。


「あんま雪ないからなぁ〜作れて1尺くらいか?」
「そっすね あ、腕とか付けます?」
「いや、小さい小枝とかないから体だけでいいだろう」

留三郎が回りを見渡しながら言う。

なんだかんだで作兵衛も作る気が出てきたらしい。
やはりそこは用具委員の血(?)であろう。


(でもただ単に丸く作るのはな・・・)
そこで何気なく留三郎を見る。


(あ、そうだ)







「・・・よし」
「お、できたのか?」
「はい 一応は」
しばらくの間、雪だるま作りに夢中になり声を出していなかった二人だが、作兵衛が声を出したことで留三郎もこちらを振り向く。


「よし!俺も出来たから見せ合いっこしようか!」
「はい・・・・え?」


しまった 見せることなど考えていなかった。
自分の下にある雪だるまを見下ろしながら後悔する。


「ん?どうかしたか作」
「み・・・見せ合いっこ・・・ですか?」

作兵衛の顔が段々と赤くなる。

「ああ!せっかく作ったんだから見せ合わなきゃそんだろう?   作は嫌なのか?」


悲しそうな顔で問われると


(嫌とは言えねえ・・・!)



「いや・・・しましょう」
「よし!じゃあせーので見せ合おう!」



「「せーのっ」」

(もうどうにでもなれ!)









出された二人の手には相手に似せてある可愛らしい雪だるま。



「・・・作」
「・・・先輩」


二人は顔を見合わせ



「「クスッ」」

一緒に笑い出した。
二人の顔はほのかに赤い。





「いやぁ〜作がおんなじことを考えていてくれたのは嬉しいなぁ!」
「まさかまさかですね! でも先輩流石、上手いですね」
「作のだって十分可愛いぞ!」
「先輩それ自分を可愛いって言ってるのと同じ・・・」


一頻り笑った後、二人は雪だるまを稽古の邪魔にならない所に置いた。 勿論隣り合わせで。


「よしっ!じゃあ稽古始めるか!」
「はい よろしくお願いします!」


雪を退かした場所で稽古を始める二人。
そんな二人が想っていることは同じである。





―いつまでもこの雪だるまのように、(先輩)(作)と一緒にいれたら良い―



...END
 


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