- WEB拍手お礼ページ用・SS募集 -
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WEB拍手お礼ページ用のSSを募集、公開させていただいていました。 2009年9月から2010年2月まで募集、2009年10月から2010年3月までの公開でした。 投稿してくださった作家の皆さま、ありがとうございました!! 制作者さま以外の作品の転載・転用は禁止です。 HPにお邪魔するさいは、マナーを守ってご迷惑をおかけしないようにしてください。 ご協力お願いいたします。 |
↓↓ 1月・投稿作品 ↓↓
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「作!初詣に行こう!」 「…なんで?」 「なぁ、留兄〜機嫌直してよぉ」 「…だって、作が…」 留三郎は先程から部屋の隅でぐずぐずといじける。 こうなると手が付けられないのは作兵衛は何度も身を持って知っている。 「作がなんでって…兄ちゃんと初詣行きたくないって…」 「言ってねぇじゃん!!」 兄は自他共に認める、超のつくほどブラコンだ。 共働きの両親に代わり、三つ年下の弟をこれでもかというほど可愛がり、また愛されたがる。 留三郎にとって作兵衛に嫌われることは死刑宣告だ。 むしろ拷問だ。いやいや、その前に自ら廃人になるか。 恐ろしいことに、いかに作兵衛の妄想が逞しいとしてもあながち間違ってない。 それほどだ。 話が逸れた。 「だから!留兄は先約があるんだろ?俺と初詣行くんじゃ彼女に悪いよ!」 これまたこの兄は嘘みたいに恐ろしいほどモテる。 顔も性格もよく、手先も器用で成績上位で一部ではハンサムは組とも呼ばれてる。 まさにパーフェクト。そのくせに女っ気がまるでない。 部活のない休日はひたすら作兵衛に構ってくれている。 とはいえ、そんな兄ならいつ彼女ができてもおかしくない。 悲しかったがしかたない。 三が日中に次屋たちと初詣に行こうかと思っていたのだが。 「彼女?誰のことだ?」 留三郎は首を傾げた。 「なにって…留兄、彼女が出来たんじゃないの?」 「はぁ!?何言ってんだ。俺は彼女なんかいないぞ?」 留三郎も驚いたが作兵衛のほうがもっと驚いた。 「嘘だぁ!だってそう言ってたんだぜ!?」 「…誰が?」 「…………も、文次兄…」 ぞわっと部屋の気温が一度以上下がった。 だから言いたくなったんだぁ! 文次郎とイマイチ馬が合わない留三郎のことだ。 怒り狂うなんて目に見えている。 「も、文次兄や伊作兄が初詣に誘ったら、留兄が先約があるから行かないって即答したって言うから… 俺、そんな約束してないし、彼女が出来たのかなって…」 話していくとますます留三郎の機嫌が下降していく。 なんとかしなければ。 新年から血を見たくない。 「…もしかして、先約って俺のこと?」 「もしかしなくとも!当たり前だろ。毎年一緒に初詣行ってるんだ。俺は作兵衛以外興味ないからな」 それ、問題だよ。留兄… そんないきり立ち、正面きって宣言されると恥ずかしい。 「じゃ、じゃあ文次兄の勘違いだったんだ!それなら留兄と初詣行けるんだ!」 手を叩いて、わざとらしいほど喜ぶと留三郎はころりと笑顔を見せた。 「もちろんだぞ。ごめんな。ギンギン野郎のせいで作兵衛に嫌な思いさせてな」 頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。 別に嫌な思いなどしてないが、あえて触れずに笑っておいた。 作兵衛もなんだかんだ言って寂しかったのは事実で、 留三郎が友人よりも自分を優先してくれたのは嬉しかった。 結局、兄のことは言えない。 自分だってブラコンの自覚がある。 「よし。んじゃ出かけるか。」 「うん。あ、留兄!またマフラー忘れてる!風邪ひくから巻いてけって言ってるだろ!」 「サンキュー作。あ、そうだ出店で甘酒買ってやるな。作は生姜抜きがいいんだよな〜」 すっかり上機嫌になった留三郎は作兵衛の上着を着せてやると手を繋いで部屋を出た。 「ちょっ…留兄!俺もう12なんだぞ!?」 「参拝しておみくじ引いて甘酒を飲もう。母さんたちには無病息災のお守り買おうな!」 作兵衛の抗議など聞こえてない。 留三郎は本当にうれしそうな顔をするから、作兵衛の抗議はたちどころに消えてしまう。 「今年もよろしくな。作」 「うん。今年もよろしく、留兄」 お願い事はただ一つ。 今年も二人で遊べますように。 End |
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